鱗粉

  • 2015.02.23 Monday
  • 23:45


柔軟剤を入れて洗濯した衣類のようにふわっとした、
まるで春のチョウチョのような女のコに逢った。
その日はとても寒い一日で、傘をさしていても黒いコートを白く染め上げてしまうほどの雪が降っていた夜だったが、
隣りの春から一足早くやってきたチョウチョのように、僕の肩の傍をヒラヒラと舞っていた。

そんな春のチョウチョのような女のコが振り向くたびに、
その長い髪がサラサラと揺れる。
そのサラサラは僕の心をくすぐって僕の心をはしゃがせたが、
自分のそんな気持ちを悟られたくなくて、
はしゃぎすぎて上がった体温を冷ますかのように、
街の冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んだ。

上品というのは、繊細なことを指すのだと思う。
繊細は繊細を選び、繊細は繊細なモノを超えて、
繊細なだけに細かい所にまでスッと入り込む。
だからあのサラサラはつまり上品だと、僕は思う。
そして、まるで春のチョウチョのような女のコは、
僕の心の中に暖かい春を連れてくる。

春のチョウチョのような女のコが笑う。
僕はそれを見て、楽しいと思う。
春のチョウチョのような女のコがまた笑う。
僕はそれを見て、この感情は何だろう、と思う。
春のチョウチョのような女のコが今度は大きく笑う。
僕はそれを見て、きっと好きだと思う。

僕の肩の傍をまたヒラヒラとチョウチョが飛んで、
僕はそのチョウチョが隣りの春へと帰ってしまわないように
そっと捕まえてみようとしたが、羽に触れた途端、
チョウチョの体が驚いたようにプルッと震えて、
僕はすぐに指を離した。

チョウチョは宙を回るようにしてパッと飛び立つと、
空中に螺旋を描き残すようにして鱗粉を舞い上がらせた。
舞い上がった鱗粉は僕の黒いコートの上にパラパラと落ち、
チョウチョはヒラヒラと飛びながら白い空の中へと消えていった。

繊細な感触と鱗粉だけが僕の指先とコートの上に残り、僕はそれをじっと見つめる。
それはどこまでも繊細で、どこまでも形の無い、
繊細なチョウチョの足跡のように見えた。

春になったら逢えるだろうか。
春を待たずに逢えるだろうか。
それはつまり、心の季節の問題で。

それはつまり、好きだからこそ問題で。

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